「ファイナルファンタジー14の絵本 ボクとモロコシさま」の著者である
ストーリー&文章担当の織田万里さん、イラスト担当の生島直樹さん、吉浦利奈さんに、『FFXIV』でも人気のモロコシ様と、「ボク」の出会いの物語について語っていただきました。FFポータルアプリ特別プレゼントのお知らせもあるので、ぜひ最後まで読んでください!
※このインタビューには『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』パッチ7.1までのネタバレを含みます。
織田万里(以下織田)
『ファイナルファンタジーXIV』シニアストーリーデザイナー。
生島直樹(以下生島)
『冒険家エリオットの千年物語』『オクトパストラベラー』などキャラクターデザイン、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のパッケージイラスト担当。
吉浦利奈(以下吉浦)
『冒険家エリオットの千年物語』、『オクトパストラベラー0』、HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』などのアーティスト。
最初に、『FFXIV』の絵本を作ることになった経緯を教えて下さい。


織田:1作目の『ナマズオとだれもみたことのないもの』の企画が立ち上がる前の話になるのですが、当時保育園に通っていた娘に寝かしつけの一環として即興でお話を聞かせるというようなことをしていまして。子どもがナマズオを気に入っていたこともあって、ナマズオの絵本を作れないかなと考えていたんです。同時期に、『FFXIV』ではプレイヤーさんの結婚報告をいただいており、その方たちの子どもたちに向けて絵本を作りたいと吉田(吉田直樹プロデューサー兼ディレクター)と話していたところ、書籍編集部からも絵本の企画が出てきて、意見が合致しトントン拍子で話が進みました。
絵本は新規参入が難しい分野ですので、お子様に向けた作品であると同時に、『FFXIV』のファングッズとしても手に持ってもらえるよう両方の側面から企画していきました。
幸運なことに1冊目が好評でしたので、すぐに2冊目の提案もいただけていたのですが、色々と立て込んでしまって……。落ち着いたタイミングで仕切り直し、それが今回の最新拡張「黄金のレガシー」のリリース時期とも重なりそうでしたので、「モロコシ様」のお話にしました。
2冊目の絵本「ボクとモロコシさま」の登場人物「ボク」は設定画では「コーナ」となっています。これはコーナの子ども時代のお話なのでしょうか?

織田:これは明確にコーナを想定して書いているのですが、お子様のことを考えた場合、必ずしも「コーナ」や「モロコシ様」を知っているわけではありませんから、あえて固有名詞を出さないことにしました。「ボク」とすれば、感情移入もしやすくなりますしね。
コーナとモロコシ様のお話にした理由を教えて下さい。
織田:先にモロコシ様の絵本を作りたいという構想があり、だいたいの話の流れを考えていました。掛け合わせるなら誰だろうとなった時に、「黄金のレガシー」のシナリオライターやシニアストーリーデザイナーの石川夏子とも相談し、結果としてコーナに決まりました。
『FFXIV』のゲーム内では、コーナは国を治める理王として登場しています。それ以前のお話である絵本の時点ではどのようなキャラクターなのでしょうか?
織田:「黄金のレガシー」で登場するコーナは、理知的でクールなインテリタイプのキャラクターとして確立しています。その子ども時代はどうだったんだろうと想像した時、理知的な部分は成長に伴って身につけていったものでしょうから、根幹にある好奇心の旺盛さに焦点を当てようと考えました。
ではモロコシ様の生まれについても教えて下さい。
織田:モロコシ様には2つルーツがあって、1つは私の妻の祖母になります。広島にて農業に従事しながら、戦中戦後の食糧難の時代を生きてこられた方です。
生前に1度だけお会いした時には介護施設に入居しておられて、だいぶ認知症が進んだ状態だったのですが、「畑の野菜をもっていきんしゃい」と、存在していない野菜を何度も何度も渡そうとするんです。
記憶が定かでなくなり家族のこともわからなくなりつつあるにも関わらず、初めて会う自分に食べ物を勧めてくださるというのは、すごい精神性だなと。その印象が強く残りました。
もう1つは、マヤで信仰されていたトウモロコシの神です。マヤ文明において、非常に重要な神格にも関わらず、現在では何と呼ばれていたのかわからなくなっており、研究者の間では「神E」と呼ばれているそうなのです。そこに妻の祖母の要素である「過去を忘れてしまっても腹が減ってる人は見逃せない」という精神性を足してできたのが、このキャラクターです。『FFXIV』では普段方言は使わないようにしているのですが、妻の祖母へのリスペクトの気持ちを込めて、ここだけは広島弁を使っています。
モロコシ様の「くいんしゃい」というセリフ、温かみを感じられて好きです!
さて、生島さん、吉浦さんにお伺いします。
イラストを担当することが決まった時の感想を教えて下さい。
生島:かねてから絵本が大好きで自分で作ったりしたこともあって、普段から絵本風の温もりのある画風に重きをおいてアート制作をしてきました。絵本のお話をいただいたときには是非やりたいと、身を乗り出す形で参加いたしました。関わる機会の少なかった「ファイナルファンタジー」に、絵本という媒体で関われたのは本当に嬉しかったです。
吉浦:生島さんからお話を聞き、他の部門とお仕事をご一緒することはあまりなかったので新鮮でした。自分が『FFXIV』プレイヤーだったこともあり、お話をいただけて本当に嬉しかったですし、生島さんが『FFXIV』で何かを描いたらどんな風になるだろうと、いち生島さん絵のファンとしても楽しみなお話でした。
キャラクター設定を読んだ際、どう思いましたか?

生島:素材の良さをそのままキャラクターにするのは好きなので「モロコシ様」のキャラクターデザインは素晴らしいと思いました。コーナ君は僕がプレイできていなかったところを動画にまとめてくれたチームの人がいて、ゲーム内での人柄がわかりました。
彼はインテリジェンスのあるリーダーで、ビシッと決めている。僕はクールなリーダーにはなれないけれど、内面にある熱さは彼とリンクするところがある。自分と重ね合わせて見ているうちに、人間として好きになりました。
理知的な彼がいざとなると身を挺して仲間や動物を守るというところは、少年期にすでに根付いている部分だと思います。根底の部分は思いやりがあって、気持ちが前に出るタイプだと捉えました。大人になってもそういった行動が垣間見えるのが魅力です。子どもの頃は彼の原石部分が剥き出しになっているので、よりそれが強く出てくると思い、大事に描かせていただきました。

表紙を描くときも、コーナ君はミコッテ族なので、猫科の俊敏性とか狩猟本能など興味を示した時にゆっくり忍び寄る姿を想像していました。

織田:生島さんの話すコーナやストーリーの解像度が高すぎます(笑)
吉浦:織田さんが書いたお話を読んだ時に、コーナ君が自分の幼少期と似ていると思ったのが一番最初の印象です。両親が共働きで一人っ子だったので、幼稚園でも遅くまで残っていて同年代の子と遊ぶことがあまりなく、家でも一人で遊んでいたのでその時の記憶が蘇りました。もちろんモロコシ様のような存在はいなかったのですが、いたらすごく楽しそうですよね!
コーナ君は幼少期にモロコシ様と出会って色々とありましたが、それを自分の力で乗り越えた経験が今の彼に活きているのかなと。二人の出会いが後に理王となるコーナのポテンシャルをさらに育てたきっかけになったのかなと思いました。
ここまでキャラクターを深く理解して描かれたのですね。お二人でイラストを担当されていますが、どの部分を描いたのか、どういう体制で描かれたのか教えて下さい。
生島:イラスト担当のお話をいただいた時に、個人ではなくチームで連携をとるならやれそう、ということで二人体制で制作しました。これまでにも僕が線画を描いて吉浦さんが着彩するといった協力をしてもらったことが何度かあって、チームの人も「生島さんと一緒にやるなら吉浦さんでしょ!」と見抜いてくれました。
今回は表紙はまるごと自分が描きましたが、中身についてはコンテを切っただけで、それを吉浦さんに着彩しながら仕上げてもらいました。必要に応じて躍動感だったり、アクションが加速していくところなどを鉛筆で描き入れたりしましたね。お話のキーになる料理メニューは吉浦さんの想像力にお任せしました。
吉浦:どういう料理が登場しているかの資料は織田さんからいただいていて、それを元に料理の部分は自分のほうでラフから起こし、生島さんに監修いただきましたね。

生島:とにかく美味しそうな色味に、と伝えたところ吉浦さんが美味しく仕上げてくれました。
吉浦:背景のコーン粒が散らばっているのは生島さんが描き足したんです。
生島:これは僕が絵の具で描いて、それをスキャンして噴火力をアップさせました。
吉浦:1ページずつ監修していただきながら進めていきましたね。
生島:美味しさのハイライトにしようね、とやりとりしました。
焼きモロコシとか、香ばしそうな香りが漂ってきそうです!
今回の絵本で初めてコーナの子ども時代の姿が登場しましたが、どのようにキャラクターデザインをされたのでしょうか。
生島:織田さんからコーナ君の設定をいただき、その中のファーのついたミコッテの戦闘的な服の写真を参考に、「同じ素材で風土に合った民族の服を作ったとしたら、きっとこんな感じじゃないかな!?」と少年コーナ君のラフデザインを見ていただきました。
大人のコーナ君は白いロングコートに赤いネクタイが印象的だったので、毛皮の色にそのイメージを重ね、首に下げた木彫りの赤いお守りを身につけることで、プレイヤーさんにもすんなり受け入れてもらえたらいいなと願って、コーナ君の色みのリンク感を図りました。(前出の設定画を参照)元々のキャラクターデザインを大切にしつつお話の中の童心を表すよう、活発さや柔らかみが出るように意識しました。地域の生活が見えてくるように「そこで生活している人々はこんな服装じゃないかな!?」とコーナ君と合わせて村の大人たちの装いも見ていただきました。

ゲームの開発作業とは違った、絵本ならではのイラストの描き方があると思います。構図などこだわった部分を教えて下さい。
生島:イラストの向きが逆だったのを編集担当さんから直しましょう!と言われて。よく考えたらページをめくっていく方向があるよな、と絵本づくりの基礎大事!と思いましたね(笑)。
このうさぎのダッシュ力は右方向にめくるからこそ発生するもので、逆にすると止まっちゃいますもんね。

確かに、右方向に読み進めていくものに、左方向では勢いが削がれてしまいますね。
織田さんがイラストを見た時の感想をお聞かせください。
織田:一番心配したのは、今回のお話はキャラクターが動き回るシーンが多いという点でした。これまでに自分が見てきた生島さんの絵はパッケージやコンセプトアートなどが多く、1枚の絵として完成しているもので、その温かみが絵本にぴったりだなと思う一方、キャラクターが動的に動いているものは見たことがありませんでした。そのため、今までのお仕事と違うことを頼んでしまっているのではないか、という不安が若干ありました。
でも出てきたコンテを見てみると、躍動感たっぷりに動いているじゃないですか。しかも、見開きの中で時間の流れすら表現されていて、自分の想像を超えるものが出てきたなと。漫画だとコマがいくつかあって行動が動いていくのが表現できるけど、絵本の場合は見開きの中で流れのあるものを表現しなきゃいけない。それがこんなにうまくできちゃうんだ、と感動しましたし、生島さんに頼んで本当によかったと感じたのを覚えています。
『FFXIV』で何かを作ろうとすると、設定画を描いてもらうだけじゃなくてキャラクターをモデリングしてモーションを作ってもらって…とすごいコストが発生します。ですから、「5歳くらいの男の子のミコッテがほしいです」なんて軽々しくは言えません。仮に子どものモデルを作れたとしても、その前後の年齢までは簡単には作れない。でも、絵本の場合はイラストレーターの方が頑張っていただければ世に出せるんですよ(笑)。そういう下心があって微妙な年頃のコーナ君を頼んだら、ものすごく可愛いのがあがってきて良かったなと。この姿が、この年頃のミコッテなんだと理解が深まりました。
1ページずつこだわって作られた絵本ですが、皆さんの一番好きなページはどこですか?
生島:美味しそうなページも好きなんですが、うさぎを追って走り出すところがコーナ君らしさが開花し始めた躍動感があって好きです。お話と合わせて加速していく感じがして!
織田:絵として好きなのは料理のシーンなんですが、一番すごいなと思ったのは中盤にあるページです。
キャラクターたちがそれぞれ違う動作をしていて、ページ内の要素がめちゃくちゃ多いんですよ。それが1枚にまとまっていて全部の情報が入っているんです。構図として難しい状況を書いたな…なんてものを要求してしまったんだと思っていたところをばっちり描いてもらって、全部入ってるじゃん!とびっくりしました。靴も脱げちゃってます。
吉浦:子どもの足っていいですよね、生命力がでるから(笑)。私は最後の見開きが一番好きです。今までのページとの温度差もあって、夢だったのかな?みたいな余韻も感じることができて、切ないけどあったかい感じがして。コーナ君の表情も好きです。
(それぞれ具体的にどんなページになっているのかは、実物でぜひご確認ください!)
この絵本をどんな人たちに読んでほしいですか?
織田:『FFXIV』をプレイしてくださっている方や、コーナが好きだ、モロコシ様が好きだと思ってくださる方に読んでいただくのが良いと思っています。逆に全く知らないお子様たちにも、読み聞かせの機会があったらぜひ読んでいただけたらいいなとも思います。
生島:織田さん、早速子どもに読ませていただきますね(笑)。
コーナ君、モロコシ様のファンがたくさんいると重々感じまして、違う時代の二人が出会っていた素敵なワンシーンを新たな角度で、キャラクター愛を深めて見ていただけたらいいなあと思いました。
吉浦:プレイヤーの皆さんに読んでほしいのはもちろん、自分は姪っ子や甥っ子に読んであげたいです。読み聞かせはしたことがないんですが……。
生島:全力でなりきって読んでください!(笑)
恥ずかしがらずに読むのがポイントですね。今後も『FFXIV』の絵本を制作されるご予定はありますか?
織田:明確な予定は今のところないんですが、そういう機会を得られるくらい手に取ってもらえたらいいなと(笑)。
ゲームを作るのって、コストを考えなきゃいけないなどいろいろ制約があったり、納期がタイトだったりいろんな辛さがあります。でも絵本の仕事は純粋にめっちゃ楽しくて!1冊分書くとあとはお任せですごいものが上がってくるんで、ただただ楽しみでいられるんです。昔出版業界にいたので素材が揃ったあとも大変なことがあると把握はしているんですけど、そのあたりのことも自分は関知しなくていいし、楽しいだけの仕事なので、やりたいです(笑)。
本日はありがとうございました!
ファイナルファンタジー14の絵本 ボクとモロコシさま

そうだ モロコシ さがさなくっちゃ!
あるひみつけた、モロコシみたいなへんなやつ。オトナたちには、みえないみたい。
さびしそうにしてたソイツをつついてみたら、さあたいへん。モロコシぬけてとんでった!
これはボクだけしってる、ナイショのはなし。
『ファイナルファンタジー14』の公式絵本第二弾!
「ボク」とモロコシ様の、不思議な出会いと冒険のお話。
今作も開発スタッフによる完全書き下ろしです。
文:織田 万里(シニアストーリーデザイナー)/絵:生島 直樹、吉浦 利奈
織田さん、生島さん、吉浦さんのサイン入り「ボクとモロコシさま」を抽選で3名様にプレゼント!



