本日、『ファイナルファンタジーXVI』(以下、『FFXVI』)初の公式世界設定本「LOGOS - The World of FINAL FANTASY XVI -」が発売となりました!
本書では、シドの隠れ家で暮らす“語り部”、ハルポクラテスを通して『FFXVI』の世界が掘り下げられています。

そんな本書の制作のきっかけや、『FFXVI』の広大な世界観をさらに深堀りするための取り組みについて制作陣にインタビューを行いました!ぜひお楽しみください。
「LOGOS - The World of FINAL FANTASY XVI -」制作チーム
-前廣和豊氏(『FFXVI』クリエイティブディレクター&原作・脚本、以下前廣)
-Michael-Christopher Koji Fox氏(『FFXVI』ローカライズディレクター、以下コージ)
-村上和代氏(『FFXVI』シナリオライター、以下村上)
まず最初に、「LOGOS - The World of FINAL FANTASY XVI -」(以下、「LOGOS」)の制作に至ったきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?
前廣:『FFXVI』は、一本のゲームのために用意する量をはるかに超える多くの設定資料を作り、それを元に制作していました。
それらの資料を見つけた宣伝チームから、これだけの設定があるのであれば整理してプレイヤーの皆さんに届けるのはどうだろうか、と提案を受けたのがきっかけです。
そしてゲーム本編の開発がひと段落した頃に、改めて世界設定本を作ろうという話が進み、実際にスタートとなりました。
コージ:その時、すでに『ファイナルファンタジーXVI アルティマニア』(『FFXVI』の攻略本)を出す話が別で進んでいたのですが、日本では今でも攻略本などを実際の書籍で買う文化があるのに対して、海外ではそういう文化があまりなかったことから、『FFXVI』のアルティマニアに関しても海外での翻訳出版はされていませんでした。アルティマニアの中には、攻略記事の他にも、一部には世界設定の内容が含まれていて、海外の皆さんから読んでみたいという声もいただいていましたが、そういった文化の面からも出版は難しく、また仮に翻訳したとしても、読みたい設定部分がメインではない書籍になってしまう問題がありました。
そこで、そうした設定をメインにした内容であれば、海外のプレイヤーの要望にも応えられますし、日本でアルティマニアを見てくださった皆さんにも新しい情報を届けられると思い、世界設定本をぜひ作ってみたいということになりました。
前廣:『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)でも世界設定本である「Encyclopaedia Eorzea ~The World of FINAL FANTASY XIV~」を何冊か出していたこともあって、同じような形が取れるならいいよね、という話もありました。

「LOGOS」は英語版と日本語版でレイアウトが異なります。どのような理由からですか?
前廣:それについては色々と議論した結果です。
まず『FFXVI』は、どの言語でも同じゲーム体験をしてほしいという思いが強くありました。それはゲーム内のテキストも同様で、単語をひとつ取ってみても、どうしても言語として表現できないものを除き、可能な限り、人名だったり、アイテム名、地名などを揃えようと考えていました。例えば『Fire』は『ファイア』だよね、といった感じに。言葉が違えど、単語が同じであれば、国や言語を超えてプレイヤー同士で会話ができると思ったからです。
この同じ体験を提供したいという点については本書についても同様で、編集担当さんにもお願いして、基本的には英語版も日本語版も、同じ内容を同じレイアウトで作成し、そこに載っている文章が言語の違いでしかないものを作りたいという話をしました。
しかし、制作を進めるうちに、出版の在り方、作り方、読み方など、英語圏と日本語圏で、書籍に対する文化の差が想像以上に大きいということがわかりました。
そして言語的にも、テキストが上がってくるにつれ、文字量の格差を埋めることが難しくなりました。日本語は、多くの部分を省略できる言語です。文章によっては、主語や動詞など、主となる構成要素がなくても、前後の流れがあることで文章が成立してしまいます。そのため、同じテキストを書いていても、日本語と英語で文字量に大きな差が出てしまったのです。
ゲーム内でしたら、システムなどである程度回収できるのですが、書籍はそうはいきません。
ですので、最終的に、統一感を保ちながらも、各言語の読者の皆さんが一番読みやすい形にするという方針に切り替え、それぞれでレイアウトを調整していくことにしました。


コージ:まさに今も英語版の編集者さんと話をしていますが、レイアウトの調整はすごく大変なんです。
大きな理由は、先ほど前廣が話していた通りで出版の文化が違うことです。各言語の読者が見やすいと思うレイアウトは異なります。文字の大きさにも違いがあって、日本語はこのサイズ、英語はこのサイズなら読める、というのが全然違います。それらを細かく精査した結果、ページ数として、日本語版が256ページに対して、英語版は368ページに落ち着きました。
ただ、ページ数が1.5倍になったからといって、単純に日本語で2ページで表現するものを3ページでおさめていけばいいかというと、これがそうではありません。例えば、もともと大きく1枚で収録していた手紙がページをまたぐことになると分割され、意図した見え方にならなくなるといった問題が発生しますし、なんとか同じページに納めようとすると、今度は他の要素が入らなくなってしまいます。こういった場合は、掲載の順番を変えたり、アートのサイズを調整したりと、まるでパズルのような調整を続けてきました。
かなりの時間をかけてこれらの調整を行い、最終的には、どちらの言語もきれいな形にまとまったかなと思っています。横に並べて見たら画像の位置や大きさなどの違いはありますが、テキストの順番はほぼ同じで、内容としては全く同じものです。英語版も日本語版も同じ流れで読むことができるため、レイアウトは違えど、同じような体験を得ることができると思います。
そんな苦労したローカライズ過程だったんですね……
他に今回の本の特徴は何でしょうか?本書の制作にあたって、ゲーム制作の過程と異なる部分はありましたか?
前廣:本書は世界設定をまとめた本ではあるのですが、いわゆる“事典”ではないんです。『FFXVI』には、世界の歴史や伝承に詳しい“語り部”と呼ばれるハルポクラテスというキャラクターが登場するのですが、彼が主人公であるクライヴなどの登場人物や、ヴァリスゼアと呼ばれる世界についてしたため本にしたという内容で、本書に記述されている文章は、すべてハルポクラテスが書いたものという体裁になっています。
コージ:そうなんです。ですので、それぞれの文章はゲーム内のセリフを書くのと同じように作られています。ハルポクラテスの“声”として書かれているので、そういった意味では、通常の書籍と異なり、ゲームの作り方と近いものがありました。
村上:違いがあるとすれば、ゲームは体験が重要で文字情報は補助的な要素であるという点です。書籍では文字の情報がメインになるため、記号選びなどに注意して読みやすくなるように気を付けました。
コージ:ハルポクラテスだけでなく、他のキャラクターの“声”も伝えたかったので、本書には、ハルポクラテスがどこかしらで手に入れてきたという体裁で、それらのキャラクターが書いた手紙や報告書といったものも入れています。キャラクターの個性に合わせた内容になっているのですが、“生の声”をそのまま載せたいという思いが強かったこともあり、クライヴ、ディオン、ガブについては、開発時からそれぞれのキャラクターを演じていただいた英語版の声優さんに、キャラクターの“声”でパーソナルなメッセージを書いてもらいたいというお願いをしました。
各エピソードにはこの要素を入れてほしいという依頼こそしましたが、基本的には、彼らが長い間演じ、理解しているキャラクターとなって書いてもらったものになります。
クライヴについては30通くらい、ディオンとガブは15通ずつくらいのボリュームとなっていますが、我々が書くのとはまた違うテイストで、新鮮な体験ができるかと思っています。
前廣:声優さんはキャラクターに命を吹き込むお仕事です。それを担った方々が書いたキャラクターの“声”はとても貴重で、本書になくてはならない存在となりました。ぜひ注目して読んでいただけたらと思います。

その他に制作上、ポイントになった点や配慮した点はありましたか?
前廣:ゲーム内の時代感、14~15世紀くらいの世界観で本を作るというところは意識しました。ハルポクラテスが本を作ったという体裁ですので、例えば各ページの絵としての質感ですとか、ゲーム内のアートを配置するにしても気を使いましたね。
コージ:ハルポクラテスは街に住んでいるわけではなく人里離れた飛空艇で生活しているため、たくさん紙があるわけでもなければ印刷機もない環境にいます。しかも個人でまとめていることから、整理されたきれいな物ではなく、1枚の紙いっぱいに内容をつめこんでいます。ちょっとしたスペースに上手に詰めていく、みたいな感じで。
そういった環境で作られた本というのを表現したかったので、例えば掲載するゲーム内のスクリーンショットに関しても、ハルポクラテスが、隠れ家にいる絵が上手い人にこういう風に描いてくれとお願いして作ったイラストであると感じてもらえるよう加工するなど、とにかくその世界に存在する本のように見てもらいたいという点を意識して制作を進めました。
前廣:本書を“ゲームの本”としてみた時には、一般的なそれとは違った感覚を覚えるところはあるかもしれません。
コージ:本書を最初から順に読んでいこうとすると、時折、流れがつながらないような部分も出てきます。そこは意図的にそうしているところがあって、先ほど話した通り、できる限り世界の情報を限られたスペースに詰め込みたいというハルポクラテスの思いを表現するために、ページ内にも情報が個々に詰め込まれているんです。
そういう意味では、通して読むよりは、少しずつ、情報ごとにゆっくり読んでもらうのもいいのかなと思います。
なるほど、ゲームをプレイする時に手元において気になったところをチェックする、みたいな楽しみ方もいいかもしれないですね。
続きまして、この本のために拡張した世界設定の中で、特に気に入っているもの、取り組んでいて楽しかったものはありますか?
コージ:たくさんあります、トルガルの過去のお話とか。
前廣:あれはいい話だったね。
コージ:他にも、短いものだとゲルルフがベネディクタの部隊に入ったお話とか。彼がなぜ、あそこまでベネディクタに付き従ったのかというお話ですね。ゲーム内では二人の関係性は出来上がっているのですが、そこに至る理由が明かされています。これを見た上でゲーム内で二人を見ると、なるほどこういうことだったのかと、新たな楽しみに繋がるんじゃないかなと思います。
ゲーム内における経済、社会の仕組みやあり方といったところにも触れられているかと思うのですが、それは元々どこまで作られていたのでしょうか?

前廣:そこはゲーム内で語られたもの、会話されたもの、表現されたものをベースに、コージの方で新たに書いたものになります。
コージ:この国はこういう国で、こういう政治形態で、といった概ねの設定はあったのですが、ゲームを作る過程ではそれ以上必要ではなかったこともあり、詳細までは詰められていませんでしたから、今回はそこを深掘りしようと思いました。
その際、ゲーム内の設定とぶつからないよう、新たに加わった情報がゲームの内容に対してもアクセントになるように、というところを意識しました。この点はすごく気にしてチェックしてもらいましたし、その上で不採用になったものもありました。
前廣:とはいえ、多くはゲームの制作中からコージと話していた内容で、ホントに0から作ったものというのはほぼないと思います。クエストを作っている側からはどうでした?
村上:そうですね、我々がもらっている情報とプレイヤーが見ている情報の間が埋まっていく印象でしたね。ゲーム内では、何かしら理屈があってこうなっているという結論だけがプレイヤーには見えている。そこの背景を設定とぶつからないようにエピソードとして埋められ、報告書だったり手紙だったりといった形で表現されています。こういうことがあったからこの国はこうなったんだねとか、こういう王様になったんだね、みたいな感じですね。
前廣:そういった内容をちゃんと読み物として膨らませてくれているので、自分たちで読んでいても新たな発見があります。この話はこうまとまったんだとか、この人は死んでしまったんだとか、この人は幸せになったんだねみたいな。『FFXVI』を好きな人ほど楽しんでもらえる内容になっていると思います。
なるほど、ゲームを更に楽しめる要素が沢山あるんですね!
それでは、最後に『ファイナルファンタジーXVI』ファンへのメッセージをお願いします!
コージ:『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)から入って『FFXIV』を経て『FFXVI』の開発に参加させていただきました。『FFXI』や『FFXIV』は終わりのないオンラインゲームで、今も続いています。これらのゲームは開発していて寂しくなるということは無かったんです。続いていきますから。
『FFXVI』では久しぶりにオフラインのゲームの開発に携わらせてもらったのですが、開発の終わりが近づいてきたときに寂しさを感じたことがありました。でもこの本に関わったことで、まだ『FFXVI』の世界は続いていて、自分はまだ関わっていけるんだと思い、すごく幸せでした。
『FFXVI』は終わりのあるゲームで、エンディングで一つの物語としては終わりを迎えてはいますが、『FFXVI』を好きでいてくださるプレイヤーの皆さんにも、まだまだ新しい情報はあって、『FFXVI』の世界は広がっているんですよ、ということをこの本を通じて感じてもらって、改めて『FFXVI』の世界を体験してもらいたいなと思います。
ぜひこの本を読んでもらって、ゲームも改めてプレイしてもらって、新しい発見をしてもらえたらなと思います!
村上:ゲームはクライヴの物語で、クライヴが見た世界や人々が描かれていました。
「LOGOS」ではハルポクラテスの目を通して、取りこぼしのないように彼が覚えていてほしくて書いた世界と人々のお話なので、彼の想像もあるだろうし、間違いもあるかもしれないけど、記録を残そうとしてたくさん書いたものです。
ぜひこの本を読んで、この人たちにもこんな物語があったんだというところを再発見してもらえたら嬉しいなと思います。
前廣:今回は『FFXVI』の設定を軸にコージが主体で執筆していき、彼と村上がまとめたものを私が監修するという形で制作しました。
『FFXVI』はクライヴになりきって体験してほしいという気持ちでゲームを構築しましたが、この「LOGOS」ではクライヴが体験した以外のこと、それこそハルポクラテスの視点で、とても多くの情報があって、でも事典ではなくハルポクラテスが書いた本、読み物として楽しめる内容になっていると思います。
『FFXVI』のファンであればあるほど新しい発見や驚きがある内容になっていますし、一方で『FFXVI』を遊んだことがない方にとっても、読み物として楽しめる内容になっています。
これをきっかけに『FFXVI』に入っていただくことも出来ると思いますし、そうなってくれたら私たちもとても幸せです。
是非いろいろな方に読んでいただけたらとても嬉しいです、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました!
■商品詳細
| 書名 | LOGOS - The World of FINAL FANTASY XVI - |
|---|---|
| 発売日 | 2025/12/16 |
| 定価 | 4,000円+税 |
| 仕様 | A4判上製256ページ |
| URL | https://store.jp.square-enix.com/item/9784757598300.html |
これは、ヴァリスゼアに生きた人々の物語を編んだ唯一の記録
かつてクリスタルによって人々の生活が成り立っていた「ヴァリスゼア」とは、一体どのような世界だったのか。
本書は、ヴァリスゼアに生きた人々の手記や資料をもとに、とある歴史研究家が編纂した、唯一の記録である。
『ファイナルファンタジーXVI』唯一の公式世界設定本が、ついに登場!
全五章・256ページでヴァリスゼアの歴史、人物、地理、文化、生物に至るまで、本書でしか読めない内容を満載している。
執筆は本作開発チームが主に手掛け、さらに英語版の声優を務めたBen Starr氏(クライヴ役)、Stewart Clarke氏(ディオン役)、Christopher York氏(ガブ役)らも特別参加。
『ファイナルファンタジーXVI』を愛するすべてのファン必携の一冊となっている。
執筆:ファイナルファンタジーXVI 開発チーム Michael-Christopher Koji Fox、
Ben Starr、Stewart Clarke、Christopher York 他
監修:ファイナルファンタジーXVI クリエイティブディレクター&原作・脚本 前廣和豊
『LOGOS - The World of FINAL FANTASY XVI -』は日本語版と英語版があり、それぞれの言語に最適なレイアウト(文字の大きさ・行間・配置など)で制作しております。それに伴い、日・英版で総ページ数が異なりますが、掲載している情報量、および内容に差はございません。