4月27日に発売から30年を迎えた『ファイナルファンタジーIII』について、当時をよく知る田中弘道さんと石井浩一さんにお話をお伺いしました。
『FFIII』開発当時の思い出話や裏話など、ここでしか聞けない内容をお届けいたします!
第2回はチョコボやモーグリの生みの親でもある石井浩一さんと『ファイナルファンタジー』シリーズの出会いから『ファイナルファンタジーIII』との関りについてお話をお伺いしました!
石井浩一プロフィール
『ファイナルファンタジー』シリーズや『聖剣伝説』シリーズに携わったゲームクリエイター。
現在も株式会社グレッゾの代表取締役を務めながら、意欲的にゲーム制作に関わっている。
まずは石井さんと『ファイナルファンタジー(以下FF)』シリーズの出会いについてお伺いできればと思います。
石井:私がスクウェアに入って、きちんとしたプロジェクトとして最初に立てた企画が『FFI』でした。
坂口(博信)さんから『ドラクエ(ドラゴンクエスト)』みたいなRPGを作るから「石井、企画を考えとけ!」と言われたのが最初です。
とはいっても、『FF』チームの当初は、坂口さんや河津(秋敏)さんは『ハイウェイスター』に関わっていて、田中(弘道)さんも別のチームにいました。
しばらくは自分一人で企画を進めていたのですが、その頃に『FFI』のベースになる部分を用意していました。
・それまでのゲームにはなかった火・水・土・風みたいな属性の概念を世界の理として取り入れる。
・ワールドマップをジオラマにして、着色したメタルフィギュア風なキャラを歩かせ、影が落ちる飛空艇みたいな乗り物による高低差表現で世界に立体感を出す。
・自分のイメージしているキャラをデザインする。
・どういう場所にいるのかと、そこでキャラ達が表情を変えながらアクションバトルする表現を可能にするサイドビューバトルシステム。
・プロローグが終わるとタイトルが出て、映画的に見せたい。
・最初に倒したボスが、実はラスボスで、最後は最初のダンジョンに戻ること。
というようなビジョンの全体的な企画を立案していました。
●『FF』シリーズの始まり、基礎がそこで作られたわけですね。
石井:チョコボとかデザインしたから、よく勘違いされちゃうんだけど、自分は肩書でも、グラフィックデザイナーだったことは一度もないんですよ。スクウェアに入社した当初から企画がメインです(笑)。世界観や絵を通してゲームを企画するタイプですね。
それまでの他ゲームなどで操作していたキャラやドット絵だと、自分では感情移入できないなと思ったから、キャラの絵を描いたり自分自身でドットを打ったりしただけです。
ゲームをイメージする時に頭の中で、絵として同時に動かしてしまうので、それに近いものをゲーム画面に落とし込むスタイルです。
例えば『FFI』の山が白で表現されていたのは、クリスタルの結晶が岩の中に含まれていて、それが光を反射して輝いているイメージがあったので山肌を白で表現していました。
あの頃はブラウン管だったので、白の面に黒いドットを置くとブラウン管のにじみで、黒いドットのまわりに水色やピンク色が出るんです。ファミコンは色数が少なかったので、少しでも色数があるように錯覚させたかったので、岩肌の中に黒い筋を入れたりして工夫していました。
●自分の思い描いたものを制限の中で表現するための工夫があったのですね。
石井:そういうのも、企画としてどう伝えたいかという工夫やアイデアだと思っています。
だから今の液晶で白黒の山を見ると、当時イメージしたものとは違う感じには見えちゃいますね。当時のブラウン管にあわせてにじみやゆがみを意識してドットを打っていたので。
今のドットはあくまで表現方法の一つで懐かしさなんかを表現したりするけど、昔はいかに錯覚させるかっていうところを工夫し表現していたと思います。
●『FF』シリーズにおける表現のこだわりが感じられるエピソードですね。
石井:こだわりと言えば『FFI』の時は、キャラにはこだわりました。それまでのゲームにはない新しいドットキャラを発明するという意欲に満ちていました。自分がゲームを企画する時に、頭の中で動いていたキャラです。
私がスクウェアに入った頃は、ゲームキャラのドット打ちは坂口さんからの全幅の信頼を受けていた渋谷(員子)さんが任されていました。『とびだせ大作戦」や『ハイウェイスター」のドットキャラがあの頃の代表的な渋谷ドットキャラだったと思います。他のゲームでも、目が1ドット、鼻が1ドット出っ張るキャラが主流で「ゲームのキャラとは、こういうものだ」というデザイン傾向でしたね。
だからこそ、「『FFI』では、ドットキャラを発明しないといけない!」それが自分の中のテーマの1つでもありました。しかし、ドットを打つのも経験ないしツールもいじったことがなく、とりあえずラフスケッチのサイドビューバトル画面をゲーム画面に落とし込む時にキャラも起こせばいいやというところから始めました。
渋谷さんも『ハイウェイスター」の開発で忙しかったので、当時グラフィックデザイナーの時田(貴司)さんのところで「これを画面に出したいんだけど手伝って」って頼み込み、その時にドット打ちを教えてもらいました。せっかく作った画像データをセーブミスしていたというオチから始まる経験でしたけどね(笑)。
自分がドット打ちしたキャラがアニメするのを見た時は本当に嬉しかったし、ジョブキャラが誕生した瞬間でもありました。やっとできたサイドビューバトル画面を坂口さんに見せたところ、「これいいじゃん。キャラもこの路線でいこう!」となりました。ドットキャラのベースを作ったら後は渋谷(員子)さんに任せていました。でもどうしても自分のイメージと違うと感じたところは失礼なのは承知で、夜に私がドットを打ち直していました。自分の中でキャラをこうしたいっていうはっきりとした強いイメージがあったので1ドットでも妥協はしたくなかったのかもしれません。
●では、今回のメインとなりますが、『FFIII』においてはどのような関わり方をされたのでしょうか?
石井:『FFIII』の企画が始まった頃は『魔界塔士Sa・Ga』チームでしたね。
当時、任天堂さんがゲームボーイを出すという予定があったのでうちからもタイトルを出すことになり、坂口さんから呼び出されました。「河津や石井は、一回ぐらい失敗の経験はした方がいいよ」って言われました。もしかしたら坂口さんは、ゲームボーイはあんまり売れないと思ってたのかもしれないけど、逆に河津さんと私は、『FF』ではない新しいものが作れるというので、すごく盛り上がっていました。
●そうだったんですね、そこから『FFIII』チームに合流したのはどういった経緯だったのでしょうか?
石井:ある時、坂口さんがやってきて、『FFIII』のジョブキャラを作ってくれと頼まれました。
すでにジョブキャラ担当の人もいるし、そもそも違うチームだしということで最初は断ってたんだけど、数回頼まれたので、条件をつけさせてもらいました。やるのはいいけど、バトル画面のジョブキャラデザインとドット絵やアニメは全部自分1人だけでやらせてくれるならやりますとはっきりと伝えました。デザインやドットのタッチが混在するのは嫌だったからです。そしたら「むしろ全部やってくれっ」ていう話になりました(笑)
天野さんデザインのNPCキャラは、キャラ担当者がドット打ちをして、また、ワールドマップを歩くジョブキャラとも、私が打ったドットキャラを踏襲して作ってくれました。
●なるほど、『FFIII』で一気に増えたジョブのデザインを担当することになったわけですね。
石井:それでまず、ジョブの企画内容を聞いたら、ジョブごとの装備の差異や異なる魔法をジョブ別に振り分けることでたくさんのジョブを差別化しようとされていたんです。
それでは個性もわかりづらく、ジョブがたくさんある意味がないしジョブキャラのデザインイメージも沸いてこなかったので、ジョブの個性付けのアイデア提案をさせてもらいました。「「ナイト」だったら「かばう」とか、シーフだったら「ぬすむ」みたいなジョブごとの固有コマンドを付けるべきなんじゃないか!」という提案をしたら、坂口さんが一言「それだ!」って言って、その方向に簡単に決まっちゃった(笑)。
今でこそ当たり前に使われるアビリティの元祖は、そんな感じで決まりました。
●ジョブデザインといってもビジュアル面だけでなくシステム的なデザインも含まれていたのですね。
石井:結果的には、そうですね。当時はみんな兼任でやってましたね。自分は企画やアイデアを出す方がメインでしたので、あまりデータをいじるような仕事をやらないようにと坂口さん、河津さん、田中さんから言われていました。自分の生かし方は、そういうものなんだろうと思ってやってたけど、データをやってた方が評価されやすかったんじゃないかとその当時は葛藤はありましたけどね。
でも後から考えてみると、データ設計してかつ作る仕事をやると、自分のデータが作れる範囲内のアイデアしか出さないようになってしまった気もするので、今ではやらなくて正解だったかなと思っています。
●ビジュアル面のデザインで印象に残っている部分はありますか?
石井:ジョブについては、当時のファミコンは3色のドットで表現されたものだったんだけど、自分の頭の中では、ジョブの設定やイメージを深く掘り下げていないとデザインに嘘が出てしまうような気がしていました。それが印象的に感じられたのが、『FFタクティクス』のジョブキャラのデザインを見た時に白魔道士の衣装を新選組の服みたいな白地に赤のだんだら模様の布みたいに書かれていたので、もしかしてみんなそう思っているのかな!?と感じました。
白魔道士の服の赤い部分は自分の中では魔力を唱えながら紡いだ赤い糸で魔力効果を増す刺繍を入れたイメージだったんです。「気」の通り道として、手首の袖の部分を介して出入りするから効果的だという理屈です。自然の力を触媒となる物を通して魔法に変換する、それを促すために杖を使ったりアミュレットを使ったりするのだというそういう設定にはすごくこだわっていましたね。だから、魔法使いは絶対に鉄の装備を付けさせない、普通の金属を使うと魔法力が分散しちゃうからせめてミスリル銀にする…とかね。
他にも、例えば『FFIII』だと「まけんし(魔剣士)」がいたと思うんだけど、戦闘不能時に中身の体が消失したように鎧だけが崩れる。それはなぜかっていうと、自分のイメージでは、暗黒の契約により肉体に闇魔法の文字が浮き出し刻まれているので、戦闘不能時にはその魔法の文字が魂と肉体を奪ってしまうために中身が空っぽの鎧だけが残るイメージだったからです。ジョブそれぞれにそういうイメージをもって作っていました。
●ただのデザインではなく行動や設定に合わせた意匠を入れ込んでいるという事なんですね
石井:そうですね、ただのキャラの着せ替えにならないようにいろんな意味を考えながら作っていました。そういうことまで考えながらジョブキャラのドット打ちをすることも企画作業の一環であったと思っています。キャラを通して、どういう設定を感じさせたいかユーザーにどういうイメージを持ってもらいたいかを創造する。でもファミコンの時は色数の少なさもあって、なんかパズルをやってるような楽しさはありましたね(笑)。制限だらけの中で、どこまで表現できるか考えて、発明してるみたいなやりがいがありました。このドット配列だったらこう見せられるじゃん、みたいなものを自分の中で生み出していくのが楽しかったです。
あの頃の発想として、気に入っていたのは山吹色とカーキ色とライトブルーを合わせた黒魔道士。どうしても黒魔道士をこの色にしたくて。戦士、白魔道士、赤魔道士みたいな白・赤・肌色みたいなパレットのキャラは作りやすかったけど、他にどういうパレットでキャラのバリエーションを作れるのかはアイデアを出すしかなかった。3色あるといっても1色は肌色にしなきゃいけない、1色を肌色固定にしちゃうとあと2色しかない、やっぱり限界はあるわけです。それで、山吹色を肌色の代わりに使えるんじゃないかとか考えたんですよね。そういう試行錯誤から山吹色とカーキとライトブルーのパレットができて、黒魔道士・モンク・シーフができました。
●『FFIII』はジョブもたくさんあって、差別化には苦労されたんじゃないでしょうか?
石井:半分以上は、ドットを打ちながらデザインしていたので確かに差別化は大変でしたね。しかし、自分はドット絵を描くのはこれが最後だと思ってやっていたので作業がシンドイとは感じませんでした。
全ジョブのポーズを全て異なるようにしたのもジョブに対する思い入れですね、絶対に使いまわすことはしたくありませんでしたから。作業に集中していた頃は常に他のジョブと照らし合わせながら差別化を図り、ジョブキャラ達の冒険の様子をイメージしながらひたすらドット打ちをし続けていました。だからこそ、すべてのジョブキャラのドット打ちが終わった時は設定などの思いを詰めた1つのアート作品として達成感があり、感慨深いものがありました。この時点で、「もうジョブキャラはデザインしない」と私の気持ちの中で決めた時でもあります。
だから、『FFIII』以降は、『FF』のジョブキャラは一切デザインしませんでした。『FFV』で、坂口さんにジョブデザインを頼まれてもやらなかったのは、それが理由です。
●『FF』のドットキャラは斜めになることで動きが見やすく、わかりやすくなった気がします。
石井:斜めの方がキャラの存在感はありますよね。存在感を感じられるからこそ感情移入が強くなる。
『FFIII』では、もうちょっとフィギュアっぽく見せたいと思って体を傾けたキャラを増やしました。基本的なアニメ表現は真横なんだけど、意外と立体感が出たりしてうまくいったと思っています。
当時のRPGは敵しか見えなくて自分の姿は出ていない主観タイプが主流でしたから、『FF』のサイドビューバトルを思いついたのも、感情移入したキャラを通して見守りながらバトルイメージを広げてほしかったからです。
キャラが痛がったり危ない時に、何とか助けたいと思ってもらうためにはどういうポーズがいいかなと考えていて、膝をつくポーズだなと思ったんです。「ヤバい助けなくちゃっ」ていう気持ちになるじゃないですか。ジョブごとに性格付けが出せていると思います。ポーズや表情作りも存在感として工夫し続けていた気がしますね。
●「たまねぎけんし」は名前も相まって『FFIII』を象徴するジョブの一つだと思うのですが、これは名前が先に決まっていたのでしょうか?
石井:ビジュアルが先で名前は決まってなかったと思います。「すっぴん」ぽいジョブを考えた時に、赤ちゃんぽい感じのコロコロっとしたものをイメージしていました。ズボンとか見るとわかるんですが、丸っこいおむつっぽいものにショルダーをひっかけただけなんです。頭も、ナイトとか衛士特有のふわふわした飾りがついてて、そこがたまねぎっぽいイメージにはなってたんだと思います。「たまねぎけんし」っていう名前は田中さんがつけたような気もするし、よく覚えてないですね(笑)。他のジョブよりは幼く見せたいという意識はありました。斜めキャラのドット打ちの実験が「たまねぎけんし」でしたね。
●ジョブについて色々お伺いしましたが、一番お気に入りのジョブは何でしょうか?
石井:みんな苦労したから、思い入れは強いよね。「たまねぎけんし」はその中でも一番かな。
『FFIII』で初めて明るい黄緑色があるパレットを入れたのも華やかさを増せたかもしれない。あのパレットのジョブキャラは作業が楽しかったなあ。あれは新しいジョブ感が出てイメージはよかったです。
そういえば『FFIII』の攻略本用にジョブキャラのイラストを描いた記憶があります。坂口さんに言われて私が描いたんだけど当時は攻略本を見た人達に、誰が描いたんだろうと言われていましたね。そのイラストを描いた時にはもう『FFIII』の開発は終わった後で、私は『聖剣伝説』を作り始めてた時期だったと思います。このイラストにはジョブのイメージがしっかり表現されていると思います。
●『FFIII』で初登場したキャラとしてモーグリがいます。モーグリの生みの親といえば石井さんですよね。
石井:小学生の時の自分だけどね、モーグリを考えたのは(笑)。
デザインをしたのは小学生の時で、当時は空想生物とかいっぱい描いていたんですよね。コアラが好きで、エリマキトカゲとかまだあんまりメジャーになっていなかった動物とかが好きだった。中でもコアラがすごく好きだったからそれをベースに色は白くしてとか、確か攻略本に載ってたような生態を考えたり、例えばコウモリみたいに天井にしがみついてる、とかね(笑)。コウモリみたいな翼もついてるんだけど、体を膨らませて浮くことができるんです。あの翼は羽ばたくためのものではなくて、方向転換するためのものです。
●ということはモーグリはコアラとコウモリが合体したようなキャラなんですね。
石井:基本的にはそうだね、だから鼻がちょっと大きかったりする。
ただ、単純にただのコアラではないのは確かだよね。最初、考えた時はコアラみたいにしたいなっていうのはあったけど、コアラそのものでは決してない。だからコアラそのものみたいになると、自分の考えたモーグリとはちょっと変わってきちゃうと思います。でも最近はいろんな形のモーグリがたくさん出てきてるよね(笑)
●モーグリの鳴き声は石井さんが決めたのですか?
石井:あれはメッセージを書いたのは自分ではなかったと思います。当時のメッセージ担当さんがとりあえずはめたんだと思います。チョコボもいたし、まさかあそこまでマスコットキャラ的に扱われるとは思ってなかったですね。
●チョコボはお話ができないですが、モーグリはお話ができるのはポイントだったかもしれないですね。
石井:うーん、あれは完全に制作上の都合だと思うけどな(笑)。
語り部がいないと成り立たないから話させたって感じじゃないかな。自分の中にはあんな饒舌にしゃべるイメージはなかった。そもそもなんだけど、自分の中ではチョコボ、モーグリに加えてもう一体のキャラがいたんですよね、それぞれの関係性は、三すくみになっているイメージで。結局、登場させることはなかったけど…いずれは3匹そろって教育番組とかに出られたらいいなと狙っていたんですけどねぇ~(笑)。
例えばチョコボは何も言わないけど、怒ったり感情を表現する強弱のある動きがあって、態度で示すタイプで少し直情的な奴。モーグリは一番ぼーっとしてて、のんびり屋な感じで、たまにボケをかまして、おいしいところを持っていく。登場していないもう一匹がどっちかっていうとよくしゃべってうるさいタイプの想定でしたから、そのキャラが出てこなかったので、結果的にはモーグリがしゃべることになっちゃったんだと思います(笑)。
●ドットになったモーグリのイメージは、ご自身の想像した通りでしたか?
石井:自分で打ったドットキャラだったから間違いなくイメージを表現できたと思っていますが、モーグリに色がついたのはドットが初めてだったと思います。ファミコン時代は色数が限られていたけど、白と赤紫みたいな色の組み合わせがモーグリだなっていうイメージがあったから、『FFIII』の攻略本用に描いたイラストでもその組み合わせになっているはずだと思います。ただ、頭のボンボンについては天野さんが付けたんですよね。天野さんにイラストをお願いした時にボンボンがついたものが上がってきたんです。最初見た時はびっくりしたけど、いいアクセントになっているなと思っています、そのボンボンが膨らんでふわーっと浮いて飛んでいくのかなっていうイメージを勝手に想像していました。
●『FFIII』に関わったことで、ご自身のその後に影響を与えた部分はありましたか?
石井:やっぱり『FF』とは違うものを作りたいと強く自覚した事かな(笑)。
『FF』が良いとか悪いとかいう話ではなく、ゲームの根本、フォーマットを作ることが自分のクリエイターとしての仕事だと思っていたから、全然違うものを作りたいと思うようになりました。毎回違うものを作るほうが楽しいというか、道なきところに道を作るという方がやりがいがあったので。
『聖剣伝説』シリーズの時には、その姿勢は色濃く反映されてシリーズとして世界観などは踏襲しているけどテーマやシステム、遊びなどは変えていきました。
●そのあと『FFXI』には、ディレクターとして関わることになりますよね。
石井:私はチームへの参加は何度も断ったんですけど、坂口さんに説得されて久しぶりに『FF』を開発することになりました(笑)
『FFXI』では自分が思い描いていた『FF』をそこそこ実現できたかなと思っているんですよね。あれを見てもらえたら、自分の当初企画を立てた『FF』っていうのがどういう物か知ってもらうことができると思っています。『FFXI』は、その時代の物で自分が思い描いた『FF』をどこまで表現できるんだろうっていうのが実現できて、関わって良かったと思っています。
●では最後となりますが、石井さんにとっての『FF』とはどういうものでしょう?
石井:『FFI』の時も『FFXI』の時も会社が厳しい状態の時だったので、意地でも面白いものを作ってやろうっていう覚悟を持って制作していたと思います。作品作りって、自分の覚悟で変わるものだなっていう事を気付かせてくれたから『FF』には本当にすごく感謝しています。
ユーザーさんも世代が分かれて、昔のは知ってるけど今のは知らないとか、今のは知ってるけど昔のは遊んだことないとなっています。作り手も同じように世代が分かれてきていますしね。しかし、縁があって『FF』を好きになってくれたのならこれからも作り手と遊び手で『FF』を盛り上げてもらいたいし、さらには皆の『FF愛』でこれからも強く輝かせて欲しいなと願っています。
●本日はありがとうございました!